【消化管】人体は「ちくわ」で、消化管の中は体の中にありながら体外

 人体には、およそ37兆個の細胞があります(以前は60兆個といわれていた)。
 細胞が働くには、エネルギー(さまざまな栄養素も含む)が必要です。

 エネルギーを得るための器官が消化管です。 
消化管

 消化管は口から肛門まで、1本の管になっていることから、「消化管はちくわ」と説明する医師もいました。
ちくわ(写真/花ざかりの森)

 ちくわの穴ですが、これはちくわの内部なのでしょうか? それとも外部なのでしょうか?
ちくわの穴(写真/食品画像のそざい屋さん)

 穴はちくわの真ん中にあるので、ちくわの内側のように見えますが、穴は外側の空間とつながっています。
 消化管に置き換えて考えると、消化管も体の真ん中にあるので、体の内側のように見えますが、消化管は体の外側の空間とつながっているわけです。


 食べ物にはエネルギーになるものもあれば、全然使えないもの、害を及ぼすものもあります。これらを取捨選択するのが、消化管の仕事です。

 口(口腔)については、食べ物を歯でかみ砕き、唾液と混ぜます。同時に、味で「これは体に入れちゃダメ!」と判断して、ペッと外に出す仕事もしています。

 胃は、胃液と混ぜ合わせて食べ物をドロドロになるまで細かくしながら、一時保存しています。

 十二指腸は、膵液や胆汁などの消化液と食べ物を混ぜて、小腸から吸収しやすい状態にします。

 小腸は、エネルギーを吸収。ちなみに水も、大部分は小腸で吸収されています。

 大腸は、エネルギー吸収後の残りかすを便として排泄する準備を行いながら、水を吸収。

 そして、肛門は便を体の外に排泄します。

 エネルギー吸収の場は、小腸の粘膜です。小腸の粘膜を通過して、初めて、体の内側に入ったことになるのです。
 口はペッと外に出す仕事をすると前述しましたが、腸でも全然使えないものや害を及ぼすものは、粘膜を通過させません。これはバリア機能と呼ばれています。

 小腸では、食べ物の成分が、粘膜から吸収できる大きさにまで分解されています。

●食べ物の成分→分解された物質
〇糖質→ブドウ糖、果糖、ガラクトース
〇タンパク質→アミノ酸
〇脂質→コレステロール、中性脂肪(トリアシルグリセロール)

 ブドウ糖、果糖、ガラクトース、アミノ酸などは、小腸で吸収された後、血液に取り込まれて静脈を経由して肝臓へと送られます。しかし、コレステロールと中性脂肪、そしてこれらに溶ける脂溶性ビタミンは、リンパ管という別のパイプラインで運ばれます。

 どうして別の経路なのでしょうか?

 コレステロールと中性脂肪は、十二指腸で胆汁と出会います。胆汁には界面活性作用、おおざっぱにいえば、食器についたベトベトの油汚れを落とす洗剤のような作用があります。
 胆汁はコレステロールと中性脂肪を小さく分散させるので、小腸の膜を通過することができます。
 そして、タンパク質と結合して、リポタンパク質になります。このときのリポタンパク質が大きいので、直径が8〜20μmの毛細血管を通れません。ですから、直径が15〜75μmの毛細リンパ管で運ばれるのです。
 そして、毛細リンパ管→集合していって太いリンパ管→ 左鎖骨下静脈→静脈→心臓→動脈→全身という経路をたどります。

※1μm(マイクロメートル)は、1000分の1mm


 よく誤解されるのですが、「小腸で吸収されたエネルギーがそのまま細胞に運ばれて、活動に使われる」というわけではありません。

 小腸で吸収されたエネルギーは、言ってしまえば、稲、ウシ1頭、ブタ1頭、マグロ1尾みたいなもの。
 稲だと、脱穀→もみすり→精米→炊飯という過程を経て、初めて食べられる状態になりますよね。
 この一連の過程を体の中で行っているのが、肝臓。これが「肝臓は化学工場」と呼ばれている理由なのです。

 たとえ口から食べたものでも、小腸で吸収されない限り、体の外にある状態ということ。そして小腸から入って来たエネルギーが、そのまま細胞に運ばれるわけではないということです。



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